手抜き主婦ヒトラー第6話

手抜き主婦。人は私をそう呼ぶ。嫌いな家事は山ほどあるが
ナンバーワンは?と聞かれたら真っ先にこう答える。つくろいもの。
ほつれたらすぐ安全ピン。仮留めのつもりが
だんだん安全ピンだらけになり、肌に冷たくあたる。
すぐ補修してしまえばあとで楽なのは百も承知なのに、
ついつい見て見ぬふりをしてしまい、やがてその服はお蔵入りとなる。
もともと針仕事が嫌いだったわけではない。とにかくぶきっちょなのだ。
ボタンをつけると隙間ができる。すそをかがると斜めになる。
一からやりなおすのが悔しくて、そのうち針を持たなくなった。
我が家には私が針を持つのを待っている、すその下りたスカートや
ボタンのとれたブラウスたちが大勢いる。当然外には出られないし、
ホームウエアにはお洒落過ぎるため、ほとんど日の目を見ない。
夫の実家は洋服屋。実家に帰るとズボンの裾上げなどを
ちゃっかりお願いしている。夫は家を継ぎたがっているが
とんでもないのである。