訃報を聞いて…  

 「すすきの霊園」そんな名前の居酒屋が札幌はすすきのにあった。
10年以上前に1回だけ行ったとき、店内は学生やサラリーマンでにぎわって
いた。ある時刻になるとおばけがでてくる。ボトルキープは自分の名前でなく
芸能人の名前でする。その芸能人が死ぬと、ボトルが1本サービスになる、
といった誠に不謹慎なシステムだった。芸能人の名前は自分で考えるの
ではなく、お店の人が持ってきた5〜6枚のカードから選択する。お客は、
その中から早く死にそうな人、できるだけ高齢の人を選ぶ。その一瞬、
自分の選んだ芸能人が早く死んでくれるように祈るのだ。棚には「淡谷のりこ」
「京唄子」などの名前の他に「郷ひろみ」「桑田圭祐」などが並んでいた。
芸能人の訃報を聞くと、真っ先にあの居酒屋のボトルにかかった札を
思い出してしまう。ボトルの主はお店に行くのだろうか。まだお店は
あるのだろうか。そして私がキープしたボトルの芸能人の
安否を気遣っている。