手抜き主婦ヒトラー 第34話 
「ヒトラーの歴史の巻」  

手抜き主婦。人は私をこう呼ぶ。ヒトラーが小学校の頃、階段を上って右が姉の
部屋、左が妹ヒトラーの部屋だった。姉の友人が遊びにくると、まずヒトラーの部屋を
ジロリと一瞥してから姉の部屋へ入る。そして決まって「弟がいるの?」と聞かれた
そうだ。姉の談話によると、開け放たれたドアから覗かれた部屋は、まるで男の部屋
だったとのことである。ブルー系のジュータンだったこともあるが、脱ぎっぱなしの服、
雑多に積んである机の上の教科書と漫画、敷きっぱなしの布団…。姉はそのたびに、
「うん、弟みたいなやつがいるの」と答えていたという。母は「お嫁にいけないよ」と
嘆いていた。わがまま放題に育ったヒトラーは「お手伝いさんを雇えるような大金持ちと
結婚するからいいの」とませたことを言った記憶がある(夢破れり)。
 あれから何十年経っただろう。今でも「整理整頓」という言葉はヒトラーの辞書にない。