手抜き主婦ヒトラー 第26話
手抜き主婦。人は私をこう呼ぶ。ちょいと太ったので、近所の公園を散歩してみることにした。
一周570mのジョギングコースのある公園。時刻は午前8時30分。ここへ越してきた
ばかりのとき、張り切って朝6時ころにジョギングをしたことがあった。3日しか続か
なかったが、ジョギング人口の多いことを知った。6時のときは若者が多かったのに、
8時半にはぐっと年齢層が高くなる。その上ジョギングではなく、ウォーキング人口が
9割を占めるようになる。 歩いているというよりも友達探しをしているかのように、
あっちこっちの人に話し掛けていくおじさん、杖をつきながらゆっくりゆっくり牛歩する
おじいさん、後で素振りの練習でもするのか、ゴルフクラブを持って歩く人、子供を幼稚園に
預けたあとの一汗、仲良し3人主婦グループ、やっせぽちな女性はめちゃめちゃ早く歩く、
ジーンズ姿でふらふら歩くビールっ腹の中年もいる、歩かずひたすら公園のベンチで休む
老人もいる…。公園には様々な人間模様が見え隠れしている。そして、私。自分では
おねえさんだと思っていたのに、先日電車で「おばさんのじゃまになるからどきなさい」
とおばあちゃん が孫に注意していた。誰から見てもおばさんと呼ばれる年になってしまった。
それなんで、8時半の年齢層にも違和感がない。本格的に歩いている人なら、タイムとか、
酸素の取り入れ方とかなりを思案しているのだろうけど、にわかウォーキング人口にとって、
歩いている間は暇である。つい、あることないこと想像してしまう。ゴルフクラブを持った人を
追いぬいてしまって、「てめぇ、抜きやがったな!」と後ろからクラブでガツンと殴られたら
どうしよう、おしゃべりなおじさんに話しかけられて「友達になって」と言われたらどうしよう、
公園でぼーっとしているおじいさんは実は私のことを付け狙ってる人だったらどうしよう……。
結局恐くなって、私の散歩は 3日で終わってしまうのである。